創業以前、小玉は設計者が図面を引くときに使用する「製図板(ドラフター)」を製造・販売するメーカーに所属していました。
当時はまだ多くの企業が製図作業を手書きで進めていた時代。
その中で小玉も熱心な営業担当者としてお客様のもとに通いつめる日々を送っていました。
そしてあるとき、その会社は事業拡張の手段として、当時最先端のコンピューターを活用した設計ツールであったCADを販売することとなり、小玉がその責任者として抜擢されました。
しかし、当時はまだCADを使った業務のオペレーションノウハウが確立されていない時代。
実際に小玉がお客様のもとに伺うと、
「購入したはいいものの、使いこなせず無用の長物となってあきらめている。」
「CADを使って設計部門は効率化できたが、工場の効率化まで実現したい。」
など、当時数千万円する大変高価なシステムを導入しながら、投資に見合った効果を出せていないお客様がたくさんいらっしゃいました。
なんとかしてお客様の声に応えたい。
人一倍お客様の懐に飛び込み、お客様に助けられてきた小玉はこうした強い思いに駆られました。
そしてお客様の本当の生産性向上に役立つ新たなCAD/CAMシステムの販売開始もしくは開発を求めて会社と直談判しましたが、会社はリスクを伴う提案になかなか動きません。
それなら、自分がそれを提供するしかない。
そんな思いで、3人の仲間と小玉は起業を決意しました。1989年、小玉が40歳のときでした。
コダマコーポレーションを設立した当時、競合となるほとんどのベンダーは、CAD/CAMの販売にあたり、「次世代の設計・製図ツール」であることを売りにしていました。しかし小玉は、CAD/CAMシステムに対してもっと本質的な、ある問いを心のうちに持っていました。
それは、「自分たちのCAD/CAMシステムを、どうしたら単なる設計・製図ツールではなく、お客様の生産性向上に貢献する経営のツールにできるか?」というものでした。
CADが単なる設計・製図ツールであるなら、せっかくの数千万の投資も、熟練した設計技術者にはかないません。
それではどうすれば良いのか。
その答えはやはり、お客様の中にありました。
ある時、小玉はプラスティック金型の設計製作会社の経営者の方から、CADで設計したデータを、CAMを使い工作機械で活用し生産に活かすという画期的な経営手法を教えられます。『CADを設計ツールとしてだけ利用するのではなく、製造工程まで効率化する道具として活用する』。まさにCAD/CAMを経営のツールにしたいという小玉の考えを実践していた最初の人でした。
この出会いをきっかけに、小玉のなかでまるで目の前の霧がはれるように、自分たちが提供すべきシステムのコンセプトが明確になっていきました。
それは、設計と製造の工程をつなぎ、全体の工程を最適化するシステム。もっと言えば、CAD/CAMという異なるシステムが、あたかも一つのシステムのようにデータを共有し、連携して動くというコンセプト(後に「データの一気通貫」と呼ぶことになる)でした。
そして、このコンセプトを実現するソフトウェアを世界中を回って探す中、もうひとつの幸運な出会いが小玉を待っていました。
フランスの当時十数名のベンチャー企業であったMissler Software社と、彼らがリリースしていたシステム、TOPsolidシリーズとの出会いです。
それはまだまだ荒削りではありながらも、3次元CADでCAD/CAM間におけるデータの一気通貫が実現でき、なにより高い理想に燃える技術者達が作り上げた本物のソリューションでした。
こうしてMissler社との関係をスタートさせた小玉でしたが、当初は日本市場の実情に即したシステムの改編やバージョンアップを要請しても、彼らは簡単には動いてくれませんでした。
このままでは、せっかくの優れたシステムも、その能力を充分に発揮できず、結果として日本のものづくり活性化が遠のいてしまう。なんとかして創業時に思い描いた、お客様の生産性を向上する理想のシステムを提供したい。
小玉は事態の打開に向け動き出します。
時には直接現地へ足を運び、根気強く日本のものづくりの実情を伝え、日本市場の可能性を伝えました。
そうした情熱は、やがて彼らを動かします。
コダマコーポレーションから同社への提案は、日本市場の声であるだけでなく、製造業の将来を見据えた本質的な提案として受け止められたのです。
まさに、プロフェッショナル同士が互いを認め、価値観を共有しあった瞬間でした。
現在では、バージョンアップの際に新たに盛り込まれる機能の実に7割から8割が当社からの提案によるものであり、日本とフランスをお互いに行き来しながら強力なパートナーシップのもとにビジネスを推進しています。
また、導入企業数も3,500社を超え、評判を呼んでさらに増え続けています。
全ては、日本のものづくり業界の活性化のために。
その思いは、当社の一人ひとりの社員に、そしてお客様へと伝わっていると信じています。